僕はなぜか、バーベキューに対してとても特別な感情を抱いている。
厚切りの肩ロースやバックリブを炭火で豪快かつ繊細な焼き加減で調理していく、あの男らしさに憧れがあったのかもしれない。
またはアウトドア好きの父の影響かもしれない。
日本でも夏になるとバーベキュー場は毎日満員になるほど人気だ。
しかし、バーベキューの歴史が浅い為か、お世辞にも上手とは言えないのが現状。
食材は一流なのにすごくもったいない!
炭火で焼いたステーキは最高に旨い。
しかし、それも焼き方次第。いや、もっと言うなら準備からだ。
少しの知識で、今までより数倍美味しい肉が焼ける。そんなバーベキューの基本をまとめてみようと思う。
目次
1.食材の適量を見極める
「よし、バーベキューに使う食材を買いに行こう!」とスーパーに行ってはみたものの、どれくらい用意すればいいのかわからない。そんな経験をお持ちの方も多いのではないだろうか?
だいたい目安としては肉は一人当たり、成人男性300g、成人女性200gくらいが適量だ。
子供もいる場合は中学生以上の男子は300g、それ以外は100~200gといったところだ。
子供といっても食べ盛りの男の子は成人よりも食欲旺盛なので少し多めに見積もっておいた方がいい。
そして、もう一つ重要なのが野菜は少なめに買っておくことだ。
特に女性がいる場合に多いのだが、野菜を大量に買って、結局半分くらい残ってしまったということが頻繁に起きる。
肉を食べるという罪悪感から野菜の購入に至るのだと思うが、やはりバーベキューのメインは肉だ。
僕の経験の話になってしまうが、バーベキュー中盤で野菜を食べている人はほとんどいない。
序盤に少し焼いて、あとは日光で干からびているのが大半なのだ。
なので、肉は多めに、野菜は少なめにというのが食材を余らせない秘訣だ。帰りの荷物も軽減され、片づけもスマートにできる。
2.BBQの3種の神器を用意しよう
バーベキューには必ず揃えておくべき、3種の神器がある。
これらがあるだけで、食材を美味しく焼け、時間の短縮になり、そしてなにより”楽”なのだ。
もし、これからバーベキューの予定があるなら是非揃えておくべきだ。値段も数千円ですべて揃えられる。
①チムニースターター(火起こし機)
チムニーとは煙突のこと。そして、この筒状の金属がチャーコルスターター、通称”チャコスタ”
これを使えば、面倒な火おこしを簡単に、しかも手早くすることができる。
原理は「煙突」の名の通り、火の上昇気流を利用したもの。火は上に上がっていくので、このような筒状のものの中で炭を燃やせば、あとは勝手に中ですべての炭が燃焼してくれる。
一番下に着火剤を敷き、火をつければあとは自動で、白く熱を持ったいい感じの炭が出来上がる。
うちわで扇ぐ必要もない。
それまでに、野菜を切ったり肉の味付けをしたりと、別の作業に取りかかれるので時短にもなるのだ。
安いものなら1,000円ほどで手に入るが、僕はスチールやステンレスでできた少し良いチャコスタを選ぶことをおすすめしたい。
丈夫で軽いので、ずっと使うことができる。
安いチャコスタは鉄製なので、重いしすぐに酸化してボロボロになってしまう。
逆に1円もお金を使いたくないという人は油缶に小さい穴を何個も開けて、オリジナルのチムニースターターを作ってみるのもアリだ。
チャコスタなら、「ユニフレーム」のチャコスタⅡが使いやすい。
大きさもちょうどいいし、スチール製なので丈夫で錆びにくい。
②水鉄砲
ふざけてるのかと思う方もいるかもしれないが、水鉄砲はバーベキューには欠かせない道具だ。
もちろん、焼いている間に水掛け合いで遊ぶ!というわけではなく火力調整で使う。
基本的に炭は遠赤外線効果で食材を焼くのであって、火で直接炙るわけではない。
それでは食材が焦げてしまう。
日本のバーベキューはここができていない人が多く、炭がメラメラと炎を上げているのに食材の焼きを始めてしまう。炎がおさまった白化した炭を使うのが基本なのだ。
しかし、それでも、風が強かったり、肉の脂が落ちたりするとまた炎が上がってしまうことがある。
そんな時、水鉄砲はちょうどいい火消しになる。少量の水で消せば、灰も巻き上がらず食材を汚さない。
水鉄砲に関しては、今までバーベキュー場で持ってきている人を見たことがないので、ほとんど浸透していないのだと思う。
でも、とても便利なので是非持っていこう。100円ショップで手に入るし、荷物にもならない。
遠方でバーベキューをする時は、このような筒状の水鉄砲がカバンに入れてもかさばらず便利だ。
もちろん、子供の遊び道具としても優秀。
③火消し壺
実はこれが1番大事なものかもしれない。
みなさんはバーベキューを楽しんだ後、使い終わった炭はどうしているだろうか?
バーベキュー場で炭を回収してくれる所もあるが、河原などの場合は自分達で処分しなくてはならない。
そこでやってしまいがちなのが、土に埋めるという行為。
一見、問題ないように思えるが、炭は炭素だけの単一元素。
なので、これ以上分解できない物質であり、土に埋めても自然に帰らないのだ。
そんなものを皆が、現場に残していったらどうなるかはおわかりのはず。
なので、炭を燃やしきってしまうか、時間がない時は火消し壺を使おう。
安い炭ならすぐ燃え尽きてしまうが、備長炭などの高級炭は燃焼時間が長いので火消し壺に入れ、持ち帰れば次回のバーベキューで再利用することができる。
一度、火をつけた炭は着火もしやすく、使いやすいので重宝するはずだ。
キャプテンスタッグ バーベキュー用 火消しつぼ アルスター M-6627
僕が使っているのは、「キャプテンスタッグ」の火消し壺。
耐熱仕様だし安価なのでおすすめだ。
3.「スリーゾーンファイア」を活用して火力調整しよう
火おこしが完了したら早速、食材を焼いていくのだがここで失敗すると一気に残念なバーベキューとなってしまう。
一番多い失敗が食材の焼き過ぎだろう。
それを防ぐ為に、僕は「スリーゾーンファイア」を推奨している。
スリーゾーンファイアとはこのように3つのゾーンに分けて炭の量を調整し、火力の強い所と弱い所で区切ることだ。
「強火ゾーン」では炭を多めに設置して火力を上げ、「弱火ゾーン」では少なめにし、火力を抑える。「中火ゾーン」ではその中間くらいに調整といった感じだ。
こうすることにより、食材の焼き加減を見ながら各ゾーンに移していき、焼き過ぎや生焼けを防いでいく。
例えば、肉を焼く場合、まずは強火ゾーンで両面をさっと焼いて旨みや肉汁を閉じ込め、中火で中をじっくりと焼いていく。
すると、表面はしっかり焼けていながら中はミディアムレアの少し赤みの残った一番美味しい状態で焼きあがるのだ。
どんなに安い肉でも焼き方を工夫することにより、柔らかくてジューシーなステーキに仕上げることができる。
野菜は基本的に、中火ゾーンで焼く。
芯まで火が通り、野菜の甘みが存分に引き出されるはずだ。弱火ゾーンは焼きあがった食材の避難場所として活用しよう。
4.肉を焼くなら塊で!
炭の遠赤外線効果は、食材の表面を焦がさずに内部に熱を通す作用がある。
なので、薄い焼肉用の肉を焼くのではせっかくの遠赤外線も活かされない。
バーベキューでは是非、厚みのある塊肉を焼こう。鉄板やフライパンで焼いた肉の何倍も美味しく仕上がるはずだ。
野菜は焼き加減を失敗するとすぐ焦げてしまうが、炭火では内部まで熱が通り甘みが増す。
特に玉ねぎは炭火だと全く味が違うので試してみて欲しい。内部の加熱で水分が飛び、糖度が凝縮される為だ。
しかし、これをフライパンでやろうとすると加熱のしすぎで焦げたり、栄養素を破壊しすぎてしまったりと調整が難しい。
せっかく、時間を使って炭起こしをしたのだから普段、家庭ではなかなか焼くことのできない大きな分厚いステーキ肉や、炭火で美味しく調理できる野菜を使った方がバーベキューの意義もあるというものだ。
バーベキューは決して、野外焼肉ではないのだ。
5.味付けにも工夫を
炭火の調整も完璧で、上質な赤身肉の塊を焼いたとする。間違いなく美味しいはずなのだが、使うタレが焼肉のタレ。すごく、もったいなくないだろうか?
どんなに美味しい肉を焼いても、味の濃すぎる市販の焼肉のタレでは”焼肉のタレの味”になるだけだ。肉の旨みもかすれてしまう。なので、一工夫する必要があるのだが、ここでは3つの方法を紹介する。
①塩、コショウのみ
僕が1番おすすめなのが、タレを使わないで肉本来の美味しさを活かす食べ方。
もちろん、ただ焼くだけではなく焼く前に肉に下ごしらえをしておく。下ごしらえといっても岩塩と胡椒をまぶすだけだ。
こうすることにより、表面の水分によって溶かされ、食塩水のような状態になる。すると肉はそれを薄める為に内側の水分を出し、身が引き締まるのだ。
岩塩の旨みも合わさって、肉が一段と美味しくなる。
注意点としては肉を焼く直前にすること。
塩は肉汁を流出させるので、時間が経つと肉の旨みがすべて流れ出てしまう。
最近は岩塩プレートなどもあり、岩塩の上で焼くことで柔らかく美味しく焼き上げることができる。500~600円くらいで手に入るので試してみるのもいい。
②自作のバーベキューソースを使う
市販のタレは食材の味を消してしまう。ならば、自分で作ればいいのだ。
にんにくとバターと醤油を合わせた甘辛ソースや、岩塩とオリーブオイルとレモン汁を合わせたさっぱりソースなど、色々なソースがあれば脂っこい肉も飽きずに食べ続けることができる。
ソースを作るのはとても簡単なので料理経験がない方でも短時間で作ることができる。ペットボトルに入れて持っていけるし、一人一つずつ自作のソースを持ってきて味比べしてみるのも面白そうだ。
③あらかじめ下味をつけておく
バーベキューをする時は当日にスーパーなどで食材を買いに行くことが多いと思うが、事前に買っておけば色々下処理を施すことができる。
ハーブやオリーブオイル、にんにくや醤油など組み合わせ次第で色々な味や香りづけができる。これらをジップロックに入れて肉を浸し、冷蔵庫で冷やしておけば、柔らかさも増し、現地で味付けをする手間も省ける。
ジップロックの便利なところはかさばらず、ゴミとして処理しやすい点だ。バーベキューには”スマートさ”が肝心なのだ。
6.みんなで協力しながら楽しく!
アメリカでは、バーベキューをする時には必ずホストとなる「ピットマスター」を決め、その人が皆をもてなす為に火おこしや食材の調理を行う。
これは、罰ゲームなどではなくバーベキューが男の見せ所として認識されているからだ。
家族でバーベキューをする時は、ピットマスターはもちろん一家の大黒柱である”お父さん”の役目。
奥さんや子供達はそれを見守り、料理ができるのを待つ。そして、一通り調理し終えたらみんなで食べるというスタイルなのである。
一方、日本のバーベキューは焼肉文化の影響から、みんなで焼きながら食べるというスタイル。
焼きと食事を同時に進行し、準備や片づけもみんなで協力し合う。
何から何まで対照的な、本場アメリカと日本のバーベキューだが、形式に至っては日本のスタイルの方がバーベキューとしては楽しいだろう。
確かに、バーベキュー慣れしたピットマスターが準備から調理までやれば失敗は少ない。だが、常日頃からバーベキューをしているアメリカ人と違い、日本人は年に数回やる程度。
だから、バーベキューを”レジャー”として楽しむ傾向がある。
レジャーではみんなが参加者であるべきだし、チームプレーも必要だ。
なので、技術が必要な炭おこしは別として、他の準備や調理などはみんなで協力しながら進めよう。
注意点としてバーベキュー慣れしている人はアドバイスするのは良いが、強制的にならないこと。
慣れている人からしたら、「焼き方が変」「野菜を細かく切りすぎ」など色々言いたくなることもあるだろう。
しかし、自分ひとりのバーベキューではないので、みんなが思い出に残る楽しいバーベキューになるように努めよう。
豊富な知識は、やりたがる人の少ない炭おこしや片づけに活かすべきだ。
これは日本のバーベキューならではの落とし穴だ。
ピットマスターとして「仕切り」が公認されているアメリカと違い、日本では過剰な仕切り屋は嫌われる。
このような行為は人々のバーベキュー離れにも繋がってしまうので注意してほしい。
まとめ
バーベキュー愛の強さから、かなりのボリュームになってしまったがこれらが基本の6つになる。細かい所はまた別の記事で紹介したいと思う。
バーベキューは自然を感じながら、美味しい料理を食べ、仲間とのコミュニケーションを楽しむことができる最高のイベントだ。
どうしても、夏のイメージになってしまうが、どうせなら1年中通して楽しみたい。それだけ、炭焼きは食材を美味しくする画期的な調理方法なのだ。
僕は暇さえあればバーベキューをしているのだが、ここで書いた方法は必ず守っている。
もし、今後バーベキューの予定があるのなら是非実践してみて欲しい。今までのバーベキューより、簡単に美味しく調理できるはずだ。目指すは脱初心者!
もちろん、自然は汚さずにマナーを守って楽しむのが鉄則だ。